男になった
髪を切った。
しかも、ベリーショート。
人生で最短。
それまでの私はうざったいロングのパーマをパサパサさせていたのだが、覚悟を決めた。
最近仕事もうまくいかないし、加えて体調も良くない……
積もり積もった鬱憤が形になっているかのようなパーマ頭を一新してみたくなったのだ。
新しいことをするのはおもしろい。
美容院に行くと髪を切るときは思い切り切ってしまう。髪を染めるときも思い切り。
ーーさぁ、長年連れ添った髪の毛よ、さようなら。
ハサミを入れてもらった瞬間に後悔した。
鏡の前には男がいた。しかもおっさんだ。
あぁ何てことをしてしまったんだ。私の女と判別できる部分は髪の毛で出来ていたのか。
わたしの思い上がった女としてのプライドがバラバラと崩れていった瞬間であった。
いろんな角度で自分を見てみる。
ロングヘアで知らずに隠されていた部分が見事に丸ごと露出している。
そのせいで髪を切った日から顎の肉が気になって仕方ない。
今まで好き放題食べていた美味しいごはんたちが敵に見えた。ノロウイルスにかかった日以来の出来事である。
だが、そんな憎きショートヘアも数日経つとなれるもので、自分に似合っているとすら錯覚してきた。
人間の自己愛とは怖いものだ。
あれからダイエットも続いているし実はいいことかもしれない。
前々から似合ってなかった可愛らしい洋服も捨てて私は新しく生まれ変われるのだ。
男になった私がもう一度女になれるよう、努力しなければいけないことは山積みだ。
仕事第一をやめて、自分も少し可愛がって痛めつけてあげるとしよう。